| 「精神のトリップへの誘い」 |
ガラス工芸作家・岡野香さんと出会って以来、僕は彼女の作品に惹かれている。
それ以来、日本に来る度に彼女の作品を拝見させて頂いてきた。
僕がプロデューサーとして関わったスウェーデンのピアニスト,Tommy Kotter Trio のCD作品「Celebration Spring(SOL SC-0010)」にも、岡野作品をカバー・ジャケットとして使用させて頂いている。 |
2005年1月、岡野さんから一通のメールが届いた。
僕が岡野さんに音楽作品を送り、彼女がその音源を聴きながら作品を創作してみたいとの事。岡野ファンの僕にしてみれば大変面白そうな話しだった。
早速、幾つかの未発表音源を候補として彼女に送ったのだが、それらの作品の中で彼女がコラボレートしたいと感じたのが、WINDUOの録音だった。
WINDUOとは、僕とサックス&フルート奏者、Anders Hagbergとの20年来に渡るデュオで、その未発表音源とは、エストニアの首都、ターリン旧市街にあるニグレスタ教会でのライブ録音である。自分で云うのもおかしな話だが、この時の演奏はなかなか素晴らしい出来映えで、そもそもジャズフェスのライブ公演の一部としてエストニア放送の為に録音したのだが、エストニア放送やスウェーデン放送でも数回に渡って放送、再放送されている。丁度この時期、2005年春にWINDUOは結成20周年を迎える事になっていた。
これまでのWINDUO作品の大半を発表してきたスウェーデンのレーベル・イモゲーナから「WINDUO20周年記念アルバム」を発売しようと云う企画が持ち上がっていた時期にも重なった。この彼女のアイデアを聞いた時、もし岡野作品をCDのジャケットに使用出来れば、更に意義がますと思った。
CD制作をする場合、アートデザイナーに音楽を聴いて貰ってジャケットへの依頼作品をデザインを注文するのが常なのであるが、今回は「その音源を聴きながら創作した作家の作品」を「こちらからお願いして」ジャケットに使用させて貰おうというのだから、願っても無い事である。 |
しばらくして岡野さんから幾つかの作品の画像ファイルが送られて来たので、早速相棒のAnders Hagbergやレコード会社関係者にも見せると、Anders をはじめイモゲーナの社長、アートディレクターといった関係者達も岡野作品を大変気に入ってしまう。
音楽と同時にお客様にもこの岡野作品を鑑賞して頂けるようにと、6ページのデジパックという豪華版CDにしようというアイデアを出したのはレコード会社の社長である。
そんな経緯で僕達WINDUOと岡野さんとのコラボレーションCDの話は、トントン拍子で進み、2005年6月、二子玉川高島屋で開かれた岡野香展に間に合う形でこのCDが完成する事になった。CD作品のおかげで、より多くの多くの方々に岡野さんとWINDUOのコラボレーション作品として鑑賞して頂ける事になったのである。 |
彼女の作品は、アブストラクトなデザインの中にも何か「暖かさ」、「メランコリー」といったモノを感じさせてくれる。つまりメランコリックなモノを暖かく包み込む暖かさが在ると云える。メロディーを吹いたら世界一と云われているハーモニカの名手、Toots Thielemansは、美しいメロディーの宝庫スウェーデンやブラジルの音楽には「メランコリックの要素」が在ると云っている。更に美しい音楽には必ずその「メランコリックな要素」が濃く、それがジャズの即興には必要不可欠なものだと語っている。
音楽の方から見ると岡野作品には、素晴らしいボサノバの香りがあり、時としてスウェーデンの何とも美しい民謡の調べが漂っているとも云えるのではないだろうか。 |
岡野作品と出会って以来、彼女の作品に触れてきたが、技術的にも感覚的にも、確実に彼女の作品の奥の深さは確実に増している。以前の作品には扇子の良さと清々しさが同時に感じさせられたが、今回の作品を拝見すると益々奥の深さが増している事を強く感じる。
技術的な事は判らないが、光の効果を上手に使用した奥行きの深い作品となっている事に驚く。2次元の世界からより立体的な3次元の作品になっている様な印象を強く受けるのである。岡野さんの作品はたしかにセンスが良いし、デザインとしても抜群に斬新で格好良いのだが、それだけの範疇では収まりきれない「何か!」が存在する。僕はそれを「メランコリーを包み込む暖かさ」と呼びたい。 |
| 僕達の音楽と岡野作品をコラボレーション作品として同時に鑑賞して頂ければ、各人各様が一種の「精神のトリップ」が出来るかも知れない。その3次元に留まらない「精神のトリップ」は、真に貴方だけの物なのである。 |
2005年6月、スウェーデンにて、
森 泰人 |